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2024年問題とは?具体的な内容から物流・運輸企業が受ける影響と対策までわかりやすく解説!

物流コラム

2024/03/22

 

 

時間外労働の上限規制が始まり、トラックドライバーが不足することによって発生する「2024年問題」。人手不足が深刻な物流・運輸業界はさらなるドライバー不足が懸念されます。2024年問題によって物流・運輸企業、また荷主企業はどのような影響を受けるのでしょうか。

2024年問題の具体的な内容にくわえ、予想される影響や対策など、くわしく解説します。

 

 


 

2024年問題とは

 

 

 

 

 

物流・運輸業界における2024年問題とは、働き方改革関連法の施行によりドライバーの労働時間に上限が適用されることで生じるさまざまな問題を指します。2024年問題とは何なのか、具体的にみていきます。

 

 

残業時間の規制

現行はドライバーに対して時間外労働の上限はありませんが、2024年4月より年間960時間と大幅に制限されます。(※特別条項付き36協定を締結した場合のみ960時間)

月換算でおよそ80時間となる時間外労働は、他業種と比べるとまだまだ多いものの、人手不足が深刻化している物流業界では業務への影響はまぬがれません。

しかし、万が一時間外労働の上限に違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。企業は上限を守るための対策がせまられています。

 

 

改善告示基準の改正

改善基準告示の改正により、トラックドライバーの拘束時間等が強化されます。

具体的には、1日あたりの拘束時間(労働時間+休息時間)は、最大16時間以内から最大15時間以内へ変更、1ヶ月あたりの拘束時間は原則293時間以内から原則284時間以内へ変更となります。(※労使協定により、年3,400時間を超えない範囲内で310時間まで延長可。)

また、勤務間インターバル制度が導入され1日の休息時間も義務付けられます。

2024年4月からは継続した休息時間は11時間を基本に、9時間を下回らないよう確保しなければなりません。

 

※勤務間インターバル制度とは
前日の終業時間から翌日の始業時間までの休息時間(=勤務間インターバル)を一定時間確保する制度。

 

 

これらの時間外労働規制の見直しにより、労働時間が減少することに伴い、荷物を運べる時間が減少し、運べる距離も減少します。同時に運べる物量も減少することが予測されます。さらには物流コストの上昇と柔軟性も低下することから、物流の停滞が懸念されます。

 

こうしたこれまでとは違う働き方により物が運べなくなることで起こる物流危機は、総じて「2024年問題」と呼ばれ、物流・運輸企業だけでなく荷主企業も対策を講じることが急務となっています。

 

 


 

物流・運輸業界が抱える課題

 

 

 

 

 

2024年問題が起きる背景には、物流・運輸業界がかかえている課題が大きく影響しています。

現在、国内貨物の輸送手段は、自動車輸送が約9割を占めています。このことよりトラックドライバーが抱える課題は、業界にとって大きな課題となっています。単に労働時間の規制だけではなく、働く環境や、業界をとりまく外部の環境など、ほかにも解決しなければならない課題を抱えています。なぜトラックドライバーの時間外労働を規制することで物流が停滞してしまうのか、トラックドライバーと物流業界が抱える具体的な課題をみていきます。

 

 

1.人手不足

 

 

 

日本は出生率の低迷により国全体で人口が減少し、少子高齢化が進んでいます。それに伴い労働人口も減少し、もともと年齢層が高い傾向にあったドライバーの高齢化もさらに進んでいます。

また、他業界にくらべ女性の社会進出も遅れていることも、人手不足の一因と言われています。

そのため、他産業と比べても有効求人倍率は高く、つねに人手不足の状況であることが分かります。

 

 

2.配送個数の増加にともなうドライバーへの負担増

 

 

 

ECサイトの普及により、宅配個数は年々増加傾向にあります。令和4年度の宅配便取扱個数は、50億588万個となっており、これは前年と比較すると1.1%増加しています。

しかし、宅配便取扱個数の増加にともない宅配ボックスや、コンビニ受け取り、受け取り用ロッカーの設置など受け取り方法は柔軟になっているものの、再配達率はいまだほぼ横ばいとなっています。政府が発表している「物流革新緊急パッケージ」では、ドライバーの負担軽減にむけて再配達率の半減(6%)を目標にするとしています。

 

 

3.労働環境の悪化

 

 

トラックドライバーの働き方は、他の業界とくらべると年間の労働時間は約2割長くなっているにも関わらず、年間所得額は約1割低く、決して働きやすい労働環境とはいえない状況です。

そのなかでも長距離ドライバーは長時間の運転にくわえ、荷待ち時間、荷役作業時間が重なり、かなりの長時間労働となっています。長時間労働の原因となっている荷待ち時間、荷役時間を削減することがトラックドライバーの時間外労働の削減と、労働環境の改善へつながるとされています。

 

 

4.物流コストの上昇による収益の悪化

 

ECサイトの利用拡大により、輸送量も拡大する一方で燃料費の高騰は深刻な問題となっています。輸送に欠かせない燃料費が高騰することで運賃に影響がおよび、利益の確保がこれまで以上に難しくなるとみられます。

さらにドライバー不足による人件費の上昇と、時間外労働の割増賃金の引上げも重なるなかで、あらたな人材確保が難しく、待遇面の向上が求められています。また時間外労働が多いとされているトラックドライバーの割増賃金が引き上げられることにより、より一層人件費が上昇しています。

 

 


 

2024年問題がもたらす影響とは

 

2024年問題は、物流・運輸企業と荷主企業へどのような影響をもたらすのでしょうか。

業界全体が抱える課題にくわえ、労働時間の規制等が加わることにより、広範囲へさまざまな影響が予想されます。

 

 

トラックの輸送能力の低下

 

 

 

2024年問題に対し何も対策を講じない場合、輸送能力の低下が予想されています。

具体的には、2024年の輸送能力はこれまでより14%低下し、重さにして約4.0億t(トラックドライバー14万人相当)の荷物が運べなくなるとされています。

さらに、そのまま何も対策を講じなければ、2030年には輸送能力は34%低下し、重さにして約9.0億t(トラックドライバー34万人相当)の荷物が運べなくなる見通しです。

このままでは物流が滞ることは明らかであり、必要なときに必要な物が運べない・届かないといった状況に陥る可能性があります。

 

 

労働時間減少にともなう賃金低下による離職

 

 

トラックドライバーの労働時間が規制されることにより、これまで時間外手当を含めた給与を受け取っていたものの、これからは時間外労働も上限が設定されることで、従来受け取っていた収入が減少することが予想されます。これにより「収入が減るのであれば転職する」というドライバーも出てくる恐れがあります。人員確保が難しい中でトラックドライバー不足にさらに拍車をかける可能性があります。

運送企業としても、時間外労働を抑制しつつこれまで通りの貨物量に対応し、なおかつドライバーの離職を防ぐためには、ドライバーへの待遇改善目的とした運賃の値上げ交渉など多岐にわたる対策が必要です。

 

 

業界全体の影響として・トラックの輸送能力の低下、・ドライバーの離職が挙げられますが、物流・運送企業または荷主企業についてそれぞれどのような影響があるのでしょうか。

 

 

 

物流・運送企業が受ける影響

 

①長距離運行が困難に

時間外労働と拘束時間の規制により、これからはドライバー1人の拘束時間内で走行できる距離が限られます。これまでドライバー1人で対応していた距離を今後はドライバー2名で輸送する、もしくは1人1日で輸送していたところを、1人で2日かけて輸送するなど、規制に合わせた運行へ変更せざるを得なくなります。これにより、いままで可能だった長距離輸送への対応が困難になる可能性があります。

 

 

②ドライバーの増員対応と労務管理の強化

これまでのように時間通りに荷物を届けるために、走行距離によってはドライバー1人で対応できない場合が発生します。時間外労働時間と拘束時間を厳守しながら、これまで通りの貨物量に対応していくためには、さらなるドライバーの確保が不可欠です。また、企業としてもこれまで以上にドライバーに対する労務管理を強化しなければなりません。

 

 

③売り上げの減少

ドライバーを確保するためのコストや、人員が確保できないことによるサービスの低下により、企業の売上が減少してしまうことが懸念されます。

取り扱う貨物量が減少することにくわえて、輸送に対応する人件費が増えてしまうことは、単純にコスト増につながり利益を圧迫してしまいます。人員確保に向けた待遇改善などコストは必要なものの、利益が減ってしまうことは経営状況の悪化につながりかねません。

 

 

 

荷主企業が受ける影響

 

①運賃の値上げによる物流コストの増加

燃料の高騰やドライバーへの待遇改善のために、物流・運送企業よりさらなる運賃の値上げが予想されます。国土交通省は運送事業者が荷主に対し適正運賃を求める際の参考指標となる「標準的運賃」を公表しています。荷主企業としても適正な転嫁へ対応できるよう、対策を検討しておく必要があります。

 

 

②サプライチェーンの見直し

トラックの輸送能力の低下を見据えて、サプライチェーンの見直しが必要になります。これまでより輸送に時間がかかることに伴い、商品調達をはじめ消費者のてもとに渡るまでの各工程で必要になる時間が長くなる可能性があります。各工程で連携をおこない、商品の調達から製造、輸送まで滞りなく進むよう、見直していく必要があります。

 

 

③運送会社との協力体制構築

ドライバーの減少により、繁忙期シーズンに商品の輸送が滞ってしまう可能性があります。ギフトシーズンや年末年始など貨物量が一時的に増えるシーズンは、運送企業も人手不足になるため、出荷したいタイミングで自社の商品を運んでもらえなくなる恐れがあります。普段から運送会社と良好な関係をたもち、多くの企業と協力体制を構築しておくことが非常に重要です。

 

 


 

 

物流業界がすべき対策

 

 

2024年問題に向けた対策として、政府は「物流革新緊急パッケージ」と題して施策を発表しています。

その中では

①物流の効率化

②荷主・消費者の行動変容

③商慣行の見直し

の3つをポイントにあげ、さらにそれぞれについて具体的な対策内容を提示しています。

対策すべきポイントをまとめてご紹介します。

 

  • ・自動フォークリフトやピッキングロボットを用いた物流施設の自動化、機械化の推進
  • ・トラックだけでなく、鉄道、内航海運を輸送手段として利用し、輸送量と分担率を増強
  • ・トラックドライバーの荷役作業の負担軽減に資する機器等を導入(テールゲートリフターなど)
  • ・ドライバーの確保に向けた大型・けん引免許など免許取得等にかかわるスキルアップ支援
  • ・中継協働物流拠点を利用した物流ネットワークの強化
  • ・標準仕様のパレットの導入や、物流データの標準化と連携の促進
  • ・燃油価格高騰を踏まえ、物流拠点の脱炭素化、車輛のEV化などの物流GXの推進
  • ・ポイント付与などを通した宅配の再配達率の半減への取組
  • ・物価動向や輸送以外のサービス(荷待ち・荷役作業等)を踏まえた「標準的な運賃」の引上げ
  • ・トラック事業における多重下請け構造の是正に向けた管理簿の作成と書面交付の義務付け

 

などが挙げられています。

 


 

まとめ

 

2024年問題を解決していくためには、ドライバーの働き方改革を通した人員確保と待遇改善、作業効率化が非常に重要なポイントとなります。

そのためには、リードタイムの調整やITの活用、輸配送形態の見直し、再配達の削減など、物流・運送企業だけでなく、荷主事業者や消費者の理解もかかせません。社会のインフラとされている物流業が滞ると、企業だけでなくわたしたちの日常生活まで影響がおよびます。まずは2024年問題について理解し、解決へ向けて適切な対策を実施しましょう。

 

 

 

 

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